学生さんへの命の講義〜命の循環とSDGs〜
命の循環とSDGs
先日、私の母校でもある西九州大学短期大学部で約160名の学生さんへ向けて講義を行いました。
テーマは「命の循環とSDGs」。その内容と当日の様子をみなさんにもシェアしたいと思います。
その日私は教壇に立ちながら、十数年前の自分を思い出していました。
あの頃は、まさか自分が“猟師”という生き方を選ぶとは思ってもいませんでした。
同級生の皆んなも絶対予測出来なかったハズ。
人生とは不思議なもので‥今、私は“命と向き合う仕事”をしています。
「持続可能」を、言葉ではなく“生き方”で語る
“SDGs”という言葉は、もはや誰もが知る時代になりました。
しかし、その理念はなかなか自分の暮らしや仕事に結び付けにくいものーー
何となく切り離されている感じのするそこにこそ、本当の問いがあるように思います。
私の仕事は、有害鳥獣の駆除と、ジビエの利活用。
つまり、命を“奪う”ことから“活かす”ことまでを一貫して担う仕事です。
そこにあるのは、華やかさではなく、危険さと地味さと根気強さでした。
命の終わりに立ち会い、その命の尊厳を守るために”伝える”。
その3つ全てが、私にとっての「持続可能な生き方」です。
「奪う」と「活かす」の間で
私は、最初から狩猟に憧れていたわけではありません。
故郷の山は荒れ、畑に打ち込んだワイヤーメッシュは壊され、
みんなが困り果てていた時、私は思いました。
「誰か何とかしてよ。助けてよ」と。
しかし、待てど暮らせどヒーローはやって来ないんですよね。悲しいことに。
そんな時ふと「自分には出来ないのか。」と自問自答したその先に、狩猟の世界があったのです。
とは言うものの、罠を仕掛け、命を奪う。
何度その現場に立ち会っても、何度経験しても慣れることがありません。
けれど、その悲しみから逃げないことや、その痛みを持ち続けることこそが、
私の中での命と向き合う覚悟だと思っているのです。
奪った命を丁寧に活かす。そして、その命の物語を伝える。
「奪う」「活かす」「伝える」――この三つの行為が、私の中で一つの循環を成していて、
命をゴミとして捨てるのではなく、循環の現場にこそSDGsの本質が息づいていると感じます。
終わりに
講演を終えたあと、嬉しいことに数名の学生さん達が私に直接お話しに来てくれました。
九州国際高等学園の卒業生さんは明るく挨拶に来てくれましたし、
起業を目指す学生さんとも楽しくお話ができました。
講義形式ではなく、やはり一対一でお話しするのはまた違った楽しみがありますよね。
ある学生さんのレポートには
「今日の先生の実体験の話を聞いて、とても胸が締め付けられました。」と書かれていました。
その文を見たとき「あぁ、私の想いは学生さんたちにも伝わったんだな‥。」
と感じることが出来、正直ほっとしました・・。(まだまだ講演者として未熟なため・・)
きっと私は、これからもこの“想い”を頼りに猟師として生きていくのだと思います。
山に生かされ、一頭一頭の命に教えられながら信念を貫いていく。
カッコ良さそうで泥くさい。スマートに見えて、先輩方のあとを必死に追う。
悪戦苦闘な毎日を送る、女猟師の講演記録でした。
